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お茶コラム『朝茶はその日の難逃れ』 第238号

無事

無事

こんにちは。外販渉外課の糟谷です。
今年も残りわずかとなりました。皆さま、いかがお過ごしですか?

年末になると、茶席でよく「無事」という言葉が用いられます。
「無事」と書かれた掛軸があったり、茶道具に「無事」という名前(茶道では「銘(めい)」と呼びます)をつけてみたり。

茶道具の中でも、抹茶をすくう道具の茶杓(ちゃしゃく)は特に重要で、席主(せきしゅ)と客の会話の中でも、茶杓の銘は必ず話題に上がります。

「御茶杓のご銘は何でしょうか?」
「はい。『無事』でございます。」
「おかげさまで、今年も『無事』に過ごせまして、、、云々」

しかし、茶杓はもともと、その場限りの消耗品で、使い捨ての道具でした。

千利休が豊臣秀吉に切腹を命じられ、最期の茶会のために削った茶杓に、「泪(なみだ)」という銘をつけたのは有名な話ですが、その茶杓は捨てられることなく、利休を尊敬する弟子たちによって大切に残されました。

一流の茶人は、茶席のために想いを込めて銘を付け、自ら茶杓を削ります。

だからこそ茶杓の銘には、それを作った人の感性や、その人自身が表れるとし、後世では大事にされるようになっていきました。

現代でも、由緒ある寺院のお坊さんや、茶道家元が作った茶杓は、「誰が削ったか」ということで、価格が一桁、二桁、違います。

若輩者の私には、お稽古用の量産品と比べてみても、ほとんど見た目に差はないような気がしますが、、、
そこは、きっと「茶の湯の奥の深さ」!まだまだ精進が必要ですね。。。

今年も一年、皆さまのおかげで『無事』に過ごすことができました。
来年もまた『無事』に過ごせますように。皆さま、よいお年をお迎えくださいませ。


茶杓
▲茶杓(ちゃしゃく)