お茶コラム『朝茶はその日の難逃れ』 第32号
周さんのおかげ
周さんのおかげ
こんにちは、営業部の岩崎です。
皆さんは「嫌いだった食物」が食べられるようになった瞬間を覚えていますか?
先日、20余年振りに従兄と再会。
高くて普段はとても行けない高級日本料理店でご馳走になりました。
お店の大将の名前は周さん(日本人です)。
誰もが知っている有名料亭で長年修行、暖簾分けを許されたそうです。
周さんは耳にインカムを着け、客・従業員の動きにギロッと時折目が光るのを隠すせいか、少し色のついたメガネを掛けています。
「何か食べられないもの、苦手なものはありませんか?」
流石!「俺が作ったものを有難く食べよ」ではなく、とても謙虚です。
私は率直に苦手なものを二つ三つ挙げました。
何でも食べられるという従兄は鼻の先でせせら笑ってました。
料理を待ち、話している間に他にも「苦手な食べ物」を思い出しました。
しかし、さっきの従兄の表情、周さんの凄みを前に、やっぱ我慢しよう、と覚悟したのでした。
まずは「ハモそうめん」から。
食べ終わり器を返したところ、ドスの効いた声、京都弁で周さんが「あれエ おツユ、飲まれませんのオ?」。
自称「ダシに命掛けてる」周さんだそうで失礼しました、とおツユ戴きました。
・・・・・・旨い。
ホントによーくダシが効いてます。
感動している私の表情を見て、周さんはほくそ笑んでいました。
そしてその後です。
「梅肉」「ナマコ+このわた」と私が言えなかった「苦手なもの」が登場。
私はそのまま黙って箸を動かしました。
しかし結果ですね、私が苦手としてきたもの、これが全てとっても美味しかった。
勿論周さんの腕の良さや好材料と条件も良かったとは思います。
でも如何に食べず嫌いで私が機を逸していたか分りました。
この晩のお陰で食べず嫌いが少し減り、食生活の幅も少し広がりました。
従兄との再会と相まり、嬉しい夜となりました。